2015年10月04日
あれから50年 ドン ウィルソン last ハカタ
~ あれから50年!~
小林 克彦
「若いころはベンチャーズに熱中していました。 あれから50年。
いま、熱中症に気をつけています」 と、
綾小路きみまろならオチがつくが、今も熱中しているため落ちが着かない。
想えば、50年前の夏、初めてベンチャーズが九州ハカタにやって来た。
朝から九電体育館を二重三重に取り囲んでいた。
エレキ狂いの少年の一人として、弁当を持って並ぶ。
よる6時に開場、走って前の席を取りにいく。座席指定などなかった。
ステージでは、司会の東洋系アメリカ人がメンバーに質問。
「ニホンの食べ物は、何が好きですか?」
「さみしー!」、 ドン・ウィルソン。
「オーノー! 寂しいじゃない。サシミのことよ。」「 ドンは、刺身が好きデース」と
司会者がフォローしたが、
演奏を聞きたいのが先でヤラセの失敗には、会場はほとんど反応しない。
今も記憶に残る1965年8月の出来事であった。
あれから50年。 半世紀が過ぎた特別の夏となった。
82歳になったドン・ウィルソンの引退興行、本当のラストステージである。
早めに市民会館に行くと、全席指定にもかかわらず大行列。 しかも女性客が多い。
50年前は、エレキに熱中した少年たちの世界であり、女子はほんの少しであった。
時代が変わったことに驚く。
それとは別に、一目で水商売と分かる女性たちが、玄人好みの和服に濃いメーキャップ、
髪を夜会巻きふうにアップした定番ファッションでおしゃべりに夢中である。
すぐよこにいるため、耳に入ってくる。
「ダメもとで当日券を買いに来たら、前から3列目の席が手に入ったわ。ツイてるわ」
と豊かな体つきの大ママ風が言う。 加賀まりこに似たチーママ風が
「ソーオ、いつものことよ。ベンチャーズが最後と言うけん来たとよ」。
「5番とか13番とかの殺人がヒット曲らしいが、詳しいことはなーんも知らんとよ」 と返す。
「ナンバ言いようとね。5番はペドロ・アンド・カプリシャスの高橋真梨子の5番街のマリーよ!
13番はヒバリちゃんの港町13番地のことやろうもん。 ベンチャーズのは、10番街の殺人よ」
「あーそうね。知らんやった。ハハハ!」と楽勝ムードに、なぜか嬉しくなった。
通ぶることはない。ロックの殿堂入りした世界一のエレキ・バンドのラストステージを
心ゆくまで楽しめばよい。 フと、この当たり前のことに気づく。
去年は、ここ市民会館の最前列、今夜は指定座席ではなく、あえて最後列に坐る。
ステージはじめ館内全体の空気を感じて、記憶にとどめたかった。
82歳のドンは、いつものように重さ5キロほどもあるエレキギターを軽々と弾いている。
50年という歳月のほかは、何の変化もない。
あるのは、 「最初」 と 「最後」のステージに出会うことができたことだ。
幕が降りてロビーに出たが、グッズやCDを買うこともなくしばしさまよう。
自分にとっての歴史的な場から離れたくなかった・・・・・。
外に出ると、和服姿がタクシーで中洲方向に走り去って行く・・・。
~ ネオンがゆれる 街を後にする ~
Posted by 横丁文化倶楽部 at 19:21│Comments(0)
│音楽
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