2016年09月03日
今日より よい明日はない P-2 マルヒラ
今日より よい明日はない P-2
ギターを抱えた エッセイスト 小林克彦
天神1丁目 福神街 ・・・ 角うち 「マルヒラ」
皆勤賞ものの常連三羽烏の一人で、酔えばハーモニカを吹きだすU興産の部長は店の人気者。
「白波」を浴びてご機嫌のハーモニカ部長は、よく吹き間違えるが、まわりの人たちは気にしない。
ハーモニカが奏でる昭和ナツメロ歌謡曲やラテンの名曲が、この店の雰囲気に溶けこんでいるからである。
ぶっつけ本番でベサメ・ムーチョを合奏したとき「あんたのギターはリズムがどんどん速くなって
いくバイ!」 「テンポは同じにしてよ!」と、怒られた。
気があう常連達が集まったときに歌う曲に、大阪ラプソディがある。
大阪の漫才上沼姉妹のヒット曲であるが、なぜここ天神の店のテーマソングになったのかは、
だれも知らない。なんども伴奏したがノリがよく、歌いやすいから自然になったのであろう。
「♪もりといずみにーかーこーまれてー・・・♪」を弾きはじめると、同年代といっしょに大合唱になる。
「ためーいきのーでるよーナ♪あなーたの くーちーづけーに♪あまーい恋を夢ーみる・・・」と、
この恋のバカンスは、女性客がハモリながら楽しんであった。
ザ・ピーナッツの実弟の伊藤悟さんという方は、広告代理店の九州地区担当常務で、わたしの
上司であった。やや小柄で顔はそっくりそのまま、歌はいうまでもなく上手であった。
酒やつまみを出すお手伝いの女性は、中州出身の名前はミッちゃん。
化粧上手の中年美人系で、豊かな胸は男の目をひく。
思春期の息子を持つシングルマザーで、昼間はラブホテルの清掃をしている。
水商売を卒業した女性でこの仕事をしている人が、わりにいるらしい。
「それは、定番コースになっとーと?」と聞くと、「そんなこと知らん!」と、怒られた。
このミッちゃんの友人で客として店にくる早苗チャンも独身、歌が上手で美空ひばりが得意である。
悲しい酒を伴奏したが、騒いでいた客がシーンとなり本気で拍手をするほどの歌唱力であった。
さて、色香は充分にあるミツちゃんは男はもうヨカと言うが、やや不充分の早苗ちゃんの方が
まだ要ると言う。人は見かけによらないものです。人生イロイロであります。
準常連のなかに、超グラマーな中年美人とご主人ではなさそうな老紳士のカップルがいる。
ソフィア・ローレンっぽい色気でオノコどもの無遠慮な目を楽しませていたが、いつしか姿を
見なくなった。
さて、証券系のダンディ、手作り豆腐屋の社長、靴磨きのAさんとSチャン、大学同級生よこちゃん、
ピアノ女教師、黒い帽子の女性、ジャズ好きの女性、老舗宝飾店のA子さん、西鉄のY上さん、
マスコミ広告一同、日銀三人組、毒舌のT工務店オヤジ、ホラ吹きトン平、西日本新聞社一同、
レストランのおしゃべりチーフ、郵便局のトクさん、九経連の理事、大手銀行マン、設計士の
山ちゃん,武ちゃんなど、沢山の人がこの舞台を駆け抜けた。

ある冬の寒い夜、M田先輩とビルの角を曲がって行くと、そこには無情のシャッターが風に泣いていた。
ポルトガルの言葉に 「今日より よい明日はない」とある。「楽しい時間は永遠ではない、
明日を煩わずに今日を楽しもうではないか」と言っている。
それにしても、あれはツワモノどもが 夢のあとだったのか・・・・ 角うち 「マルヒラ」
ギターを抱えた エッセイスト 小林克彦
天神1丁目 福神街 ・・・ 角うち 「マルヒラ」
皆勤賞ものの常連三羽烏の一人で、酔えばハーモニカを吹きだすU興産の部長は店の人気者。
「白波」を浴びてご機嫌のハーモニカ部長は、よく吹き間違えるが、まわりの人たちは気にしない。
ハーモニカが奏でる昭和ナツメロ歌謡曲やラテンの名曲が、この店の雰囲気に溶けこんでいるからである。
ぶっつけ本番でベサメ・ムーチョを合奏したとき「あんたのギターはリズムがどんどん速くなって
いくバイ!」 「テンポは同じにしてよ!」と、怒られた。
気があう常連達が集まったときに歌う曲に、大阪ラプソディがある。
大阪の漫才上沼姉妹のヒット曲であるが、なぜここ天神の店のテーマソングになったのかは、
だれも知らない。なんども伴奏したがノリがよく、歌いやすいから自然になったのであろう。
「♪もりといずみにーかーこーまれてー・・・♪」を弾きはじめると、同年代といっしょに大合唱になる。
「ためーいきのーでるよーナ♪あなーたの くーちーづけーに♪あまーい恋を夢ーみる・・・」と、
この恋のバカンスは、女性客がハモリながら楽しんであった。
ザ・ピーナッツの実弟の伊藤悟さんという方は、広告代理店の九州地区担当常務で、わたしの
上司であった。やや小柄で顔はそっくりそのまま、歌はいうまでもなく上手であった。
酒やつまみを出すお手伝いの女性は、中州出身の名前はミッちゃん。
化粧上手の中年美人系で、豊かな胸は男の目をひく。
思春期の息子を持つシングルマザーで、昼間はラブホテルの清掃をしている。
水商売を卒業した女性でこの仕事をしている人が、わりにいるらしい。
「それは、定番コースになっとーと?」と聞くと、「そんなこと知らん!」と、怒られた。
このミッちゃんの友人で客として店にくる早苗チャンも独身、歌が上手で美空ひばりが得意である。
悲しい酒を伴奏したが、騒いでいた客がシーンとなり本気で拍手をするほどの歌唱力であった。
さて、色香は充分にあるミツちゃんは男はもうヨカと言うが、やや不充分の早苗ちゃんの方が
まだ要ると言う。人は見かけによらないものです。人生イロイロであります。
準常連のなかに、超グラマーな中年美人とご主人ではなさそうな老紳士のカップルがいる。
ソフィア・ローレンっぽい色気でオノコどもの無遠慮な目を楽しませていたが、いつしか姿を
見なくなった。
さて、証券系のダンディ、手作り豆腐屋の社長、靴磨きのAさんとSチャン、大学同級生よこちゃん、
ピアノ女教師、黒い帽子の女性、ジャズ好きの女性、老舗宝飾店のA子さん、西鉄のY上さん、
マスコミ広告一同、日銀三人組、毒舌のT工務店オヤジ、ホラ吹きトン平、西日本新聞社一同、
レストランのおしゃべりチーフ、郵便局のトクさん、九経連の理事、大手銀行マン、設計士の
山ちゃん,武ちゃんなど、沢山の人がこの舞台を駆け抜けた。
ある冬の寒い夜、M田先輩とビルの角を曲がって行くと、そこには無情のシャッターが風に泣いていた。
ポルトガルの言葉に 「今日より よい明日はない」とある。「楽しい時間は永遠ではない、
明日を煩わずに今日を楽しもうではないか」と言っている。
それにしても、あれはツワモノどもが 夢のあとだったのか・・・・ 角うち 「マルヒラ」